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リンカーンに山登り

どーも僕です。
お久しぶりです。
待たせてはいないでしょうけど。
いやー毎日じめじめとしていてイヤデスネ。

さて、久々の続きです。

さて、そんなこんなで山を下って行ったわけですが、登りに比べ、膝にかかる負担が非常に大きい。さらに目の前には精神衛生上あまりよくない人物がへらへら笑っている。

「大丈夫かい?足がずいぶんと痛いようだけど」

「おや、キミにもそうやって他人を気遣う事が出来るんだね。さすがに一緒に苦労をしただけある。山は偉大だね」

「まあ僕は好き好んで苦労をしたわけじゃないけどね。いや、もし痛くて歩くのも大変なようだったら、もうキミを置いて行っていいかい?と聞こうと思ったんだ」

ああ、さっきまでの自分が恥ずかしい彼に何を期待したのだろう。自分の未熟さを呪い、ついでに彼を呪う。

「まあ待ちたまえ。キミみたいに右も左もわからない、人生まで迷っているような人間がひとりで山を歩くなんて命を捨てるようなもんだ。山を舐めるな」

ひとり浮き足立ち先を急ごうとする彼を理性的に制し、足下にある「鈍器のようなもの」として通用するくらいの石を投げつけてやりたいという衝動を理性的に制す。
とたん

「うひゃあ!」

前方を歩く彼がマンガのような奇声を響かせる。
見ると彼の近辺に大型の蜂が飛んでいる。
いいぞ、よし、刺せ。

蜂が去った後、彼が下から駆け上がってくる。

「ちょっと、なんで助けてくれないんだ。蜂が近くにいたじゃないか」

理不尽に僕を問いただす臆病者。

「ひとりだけ先に行こうとするからだ。しかし『うひゃあ』という声を発する人間なんて本当にいたのだな」

後ろから山を下りて来た婦人もその奇声を聞いたのだろう。「大丈夫?」と言い争う僕らの横を通り過ぎる、明らかな含み笑いを隠して。
「うひゃあ」であるのだから含み笑いなどせず、声をあげて指を指してこの臆病者を笑ってくれてもいいのに。

この後には臆病者はあまり僕から離れる事もせず、ゆっくりと下山する事となった。


円山動物園側から下山し、ようやくなだらかな場所へ出る。普段着の人、ハイヒールの人が行き交う。ビールはもう目の前だ。

「斜めじゃない場所ってのはいいね。やっぱり斜めなのはよくないよ。若いうちはそれはたまには斜に構える事もあるだろうさ。でもやっぱり平穏が一番だね」

「そのとおりだね。この山登りは僕らに平和の大切さを教えてくれたよね。あと、無計画に「リンカーンの格好をして山から見下ろせばなんかいい写真が撮れるんじゃね?」なんて適当な考えでいちゃいけないってこともね」

「いやいや、しかしまあ、きっといい写真の一枚くらいはあると思うよ?なんたってわざわざ山に登ったんだから」

「そうだね、これでいい写真が撮れなかったからもう一度登れったってそうはいかないよ?ちょっと飲みながら見てみようよ。ちゃんとカメラは持って来てるね?」

「あたりまえだよ。カメラはほらこの袋の中に…」

続く